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答へながら、彼は紅くなつていた。
と、房一は小谷に向つて訊いた。
徳次は又ぐらりとした。
「ホリョ?」
「ね、大石さん。今夜一つ私のところで慰労宴をやらうといふんですがね。あなたもぜひどうですか。この三人だけでね」
「それは、せんせいのお考へに任せますわ。――ですが、今日のことは、ほんの内輪の間違ひやさかい、そのことは含んどいてもらはんと困ります。よろしいな。――内輪のことや」
「ほらね、かういふ形のと、又別にかういふのがあるだらう」
房一はむつつりとしたまゝ答へた。
「徳さんが新しいのを掛けてくれるまで待つていた方がいいかもしれませんね、これは」
その頃の宿屋には二階の便所はないので、逗留客はみな下の奥の便所へ行くことになっている。今夜も二階の女の客がその便所へ通って、そとから第一の便所の戸を開けようとしたが開かない。さらに第二の便所の戸を開けようとしたが、これも開かない。そればかりでなく、うちからは戸をこつこつと軽く叩いて、うちには人がいると知らせるのである。そこで、しばらく待っているうちに、他の客も二、三人来あわせた。いつまで待っても出て来ないので、その一人が待ちかねて戸を開けようとすると、やはり開かない。前とおなじように、うちからは戸を軽く叩くのである。しかも二つの便所とも同様であるので、人々もすこしく不思議を感じて来た。
「おい、早く早く」
二人は岸に着いた。
「おい、ビールをくれ」と、しやがれた低い声で云ふと、土間の安テーブルの前に腰を下した。
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